『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(3)急いでメイクアップ♪ | ■RED AND BLACK extra■舞台と本の日記

『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(3)急いでメイクアップ♪

♪ 急いでメイクアップ

   かけよう 8トラック

   仕上げにウイッグのせて ♪ (うろ覚えなので歌詞間違えているかも)


う~ このフレーズ思い出すと、また観にいきたくなるよ。

でも実は、不安だったのである。初日前に、下のニュースで三上ヘドの顔写真を見たときは…。「あれ、何か顔が黒いけど… おしろいを忘れちゃったのかな」と、真面目に考え込んだものだ。

(サンスポ.comより、公開稽古の記事)

 “原形”は?三上博史、全身全霊で「ヘドウィグ」

http://www.sanspo.com/geino/top/gt200506/gt2005061606.html


劇場で目の当たりにした今年のヘドウィグは、初演のときよりもメイクに気合いを感じた。確かに、「分かりやすいキレイさ」は弱くなっているかもしれない。今年は暗めの肌色に、真っ白い爆発ロングヘア、顔に光る石をちりばめた姿でご登場。女装なんだけど、「うわ~ 本当の女よりきれいね~」と素直に感嘆したくなるタイプのものとは違った。今回のビジュアルはかなり濃密で、「うっ」と引いてしまうくらいのクドさを観客にぶつけていたような気がした。


それなのに、観ていてなんだか満たされた気持ちがした。正直言うと、メイクや衣装の細部はどうでもいいのである。ただ、その人の魂というか念というか、「本気」の度合いが、外見に現れているのを見るのが好きなのだ。


三上博史さんが、去年とメイクや衣装を変えてきた意図について、くわしいところは分からない。だけど、かなりこだわりを持っているのだろうなというのは、よく伝わってくる。彼のヘドウィグを見ていて、「上手に作りこんでいるな」と思うところは全然なかった。だって、三上さんの身体の一部のように感じるから。劇中で、毛皮のコートを指して、イツァークに「ほら、アタシの皮膚を取ってよ。皮膚よ!」と言うシーンがあったと思うけど、まさにそんなふうに、派手な装いがなじんでいる。


この作品を見て、自分はなんで舞台の衣装やメイクというものに心ひかれるのか、改めて思い起こしてみた。

以前、知り合いが「誰に会うのでもないのに、なんでおしゃれするの?」と聞いてきたことがある。「この人には、分からないんだなあ…」と、私はちょっとがっかりした。化粧したり着飾ったりするときに、心の中でぐるぐる渦巻くもの。一塗りするごとに、一筆描くごとに、自分の内面をさらけだして格闘するような気持ち…。ま、鏡を見ながらこんな暗いこと考える人はいないかな? ともかく、「飾ること」というのは同時に、「むき出しの姿を見つめること」と言えるのではないだろうか。


で、三上ヘドウィグの外見を復習しようと思ったのに、パンフレットには満足な写真がないよ…。アップの写真は数点あるけど、ザラザラの画質なので、じっくり研究ができない。全体的におしゃれな感じに編集してあるのは分かるけど、ヘアメイク・衣装好きの心をくすぐるページもくださいませ。