『SHAKESPEARE'S R&J』男だけのロミオとジュリエット | ■RED AND BLACK extra■舞台と本の日記

『SHAKESPEARE'S R&J』男だけのロミオとジュリエット

今、かばんに入れて持ち歩いて読んでいる本は『ロミオとジュリエット』 です。ははは、いい年して恥ずかし…。本当はこっちのほう を買うつもりで、本屋さんに行ったのですが、解説が大人にはやや物足りなかったので(そりゃそうです。少年少女向けの企画シリーズですもの)、やはり戯曲そのものを読むことにしました。


電車の中で読むのは照れるのでやめようと思ってたのですが、読み出すとそんなこと気にする間もなく、引き込まれてしまいます。シェイクスピアといえば、あの長いせりふで有名ですが、この話は言葉の修飾一つひとつが美しく、くりかえし味わっても飽きることがありません。


読んでいて、2月にパルコ劇場で観た『SHAKESPEARE'S R&J』を思い出しました。これは、厳格なカソリックの男子高校の寮仲間が、夜中にこっそり読みだした『ロミオとジュリエット』に夢中になり、自分たちで演じ始めるという設定のお芝居です。


男と女の恋物語を、男だけで演じているわけですが、それによって、ロミオとジュリエットの物語がいかに普遍的な力を持っているのか、よりくっきり伝わってきたと思います。恋に落ちるのに理由は必要ないこと。自分と相手を固く信じる気持ち。信じる者のために、ためらわず疾走する姿…。その想いの強さは、性別や国や時代の違いに関係なく、こちらへ迫ってきます。


戯曲を読んで、『R&J』の芝居で使われていたせりふが、ほぼ原作に忠実だったということが分かりました。このクラシックな言葉遣いが、男子校の生徒たちだけという異色の登場人物や、椅子と赤い布だけという現代的な舞台装置と、不思議な相乗効果を成しているのです。


設定だけみれば確かに変わった「ロミオとジュリエット」なのですが、この禁欲的な背景があってこそ、ロミオとジュリエットの悲恋が「昔の名作」「上流社会のお話」にとどまることなく、現代に通用する力強いメッセージとして浮かび上がってきたのではないでしょうか。


ジュリエットはまだ14の春も迎えない年。若さゆえに一途に走りぬけた恋の、ひりひりするような感触を表現するのには、やはり高校生という設定で正解だったのでしょう。再演を希望する舞台です。

R&J  

SHAKESPEARE'S R&J  キャスト 首藤康之、佐藤隆太、小林高鹿、浦井健治